グロース銘柄のパフォーマンスが好調な理由
世界経済は、新型コロナウイルス関連の危機のインパクトを引き続き受けている一方、株価は3月の底値から大幅に反発しています。株式と、中でもグロース銘柄のパフォーマンスがこれほど好調で、場合によっては過去最高値を付ける理由について、頻繁に質問を受けます弊社は長期志向の投資家として、少なくとも2020年第3四半期までは続く公算の大きい経済の混乱があったことを認識しています。しかしながら、グロース銘柄を長期的なベースで評価すると、今年の経済的損失は、企業の長期的な価値のわずかな部分に過ぎません。今年は、株式の価値に計算上及ぼされるインパクト以上に、株価が下落した例が多く見受けられました。少数の事例では、企業が新型コロナウイルスから実際には恩恵を受けることにより、その企業の成長に加速がみられ、その成長は減速すると予想されるものの、それら企業は高い水準から成長すると考えられます。この点を示すために、われわれは定成長利益モデルで計算する次の価値を使います:
価値 = キャッシュフロー / (k - g)
ここで、kは資本コストで、gは企業の成長率です。利益の価値は、投資において最も重要な方程式である、と弊社は見ています。それによって、価値は利益率(ひいてはキャッシュフロー)の改善、資本コストの低下および企業の成長によって、価値が上昇することが分かります。弊社は過去に、バリュエーションにおける、現在の利益率上昇値との比較で、成長率の威力を示しました。それを再度示すために、以下の例を考えてみてください。
上の例にみられるように、現在のキャッシュフローが20%少ないにもかかわらず、4%の長期的な成長率が、現在のバリュエーションに大きなインパクトを及ぼし、より高い現在価値を生み出しています。これは、成長率の威力を示しています。比較的高いバリュエーションは、価値の大半が将来のキャッシュフローに起因することを示唆しています。
ここで、これらのシナリオを、新型コロナウイルスのような経済的ショックの観点から検討してみます。どの3社においても、年初の予想が次の通りだったと想定します。
- キャッシュフロー:10ドル。
- 長期的な成長率:3%
- 資本コスト11%
価値 = 10ドル / (11% - 3%) = 125ドル、今年のキャッシュフローに対して12.5倍
しかし、3社それぞれに対する経済的ショックのインパクトは異なります。
企業1:今年のキャッシュフローは、8ドルへ20%減少します。来年のキャッシュフローは10ドルへ回復し、その後の成長率は3%へ回復します。新たな価値は、今年の8ドルのキャッシュフローと、来年から始まる利益の長期的価値の現在価値で構成されます。
バリュエーションに対するインパクトはマイナス3.5%で、株価下落が3.5%を超えた場合は、買い場と示唆されます3.5%を超える株価下落は、現在と将来の予想に対するインパクトの計算が困難なことに起因する、市場全体の資本コスト上昇と解釈できる、と弊社はみています。また、業績に対する当面のインパクトが現れる今年を基準とした倍率を使うバリュエーションは、投資の誤った結論につながる可能性がある、と弊社は指摘したいと思います。。この場合、予想の下方修正によって、年の株価/キャッシュフロー倍率は15.1倍となります。これは、経済的インパクト前に計算された12.5倍より高くなります。時間が経過すると共に、今年は現在価値の計算にもはや含まれなくなります。 株価は、以前の価値へ反発し、成長によって長期的に上昇する可能性があります。 |
企業2:今年のキャッシュフローは、8ドルへ20%減少し、来年は長期的な3%の成長へ戻りますが、低い水準からの成長です。
この場合、価値の損失は20%で、株価下落が20%を超えた場合は買い場となります。この状況では、キャッシュフローが修復されるまでに時間がかかるため、株価が回復するまで時間がかかることになります。 |
企業3:この企業は、 危機の間に必要とされる製品およびサービスを持っており、その結果として今年のキャッシュフローが12ドルへ増加すると見込まれます。成長は、来年から長期的な成長率へ戻ると予想されますが、高い水準からの成長となります。危機は顧客獲得におけるユニークな機会であるため、売上高の出発点が上昇します。
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現在のように経済的に厳しいときに投資を成功させるためには、ビジネスモデルが将来にどのように回復するかに関する洞察と、事業のファンダメンタルズに対する市場の誤った解釈を機動的に有効利用することが求められる、と弊社はみています。
弊社は、われわれの投資対象のビジネスモデルを評価するために、技術力についての深い見識を駆使して投資の様相を引き続き調査し、最近のように市場が乱高下する間でも、弊社のファンダメンタルズに基づく調査努力から逸脱しません。新型コロナウイルスによって当面は事業が混乱するでしょうが、弊社が標的とする企業は引き続き数年間に亘って成長する好位置にあると認識しています。これらの企業は、弊社の顧客がその投資の目的を達成することに貢献する、最適な位置にあると考えます。いつものことながら、TCWの株式戦略に対する皆様のご信頼とご支援に感謝いたします。
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